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お知らせ

3月2日発売:『心の複雑さに向き合うとは、どういうことか』

全ての対人支援者のための必須実用書

現代思想家のケン・ウィルバー(Ken Wilber)が提唱する「インテグラル理論」をもとにした実践書は、ウィルバー自身による『Integral Life Practice』だけでなく、各領域の専門家によるものが多数執筆されている(とりわけ、いわゆる「リーダーシップ開発」や「組織開発」等の組織経営に関連した書籍は数多く出版されている)。

しかし、臨床心理領域に関する書籍となると、その数は少ない。具体的には、Mark D. FormanのA Guide to Integral Psychotherapy: Complexity, Integration, and Spirituality in PracticeとR. Elliott Ingersoll & David M. ZeitlerのIntegral Psychotherapy: Inside Out/Outside In(共にState University of New York出版)くらいだろう。

共に熟練の臨床家達によるものであるが、今回そのひとつが邦訳されたことをこころから歓迎したいと思う。

翻訳者の加藤 洋平氏は、大学院在学中に著者と直接の親交をむすび、多くの学びを得たという。その意味では、本書は望み得る最高の翻訳を得たものといえるだろう。

「インテグラル」(統合的)なアプローチを「インテグラル」たらしめる要件は、「人類のさまざまな知の領域からの洞察を、相補的な形で活用」(p. 49)しようとするその態度と方法にあるといえる。巷には、多様な理論や方法を折衷的に用いるアプローチは存在するが、多様な方法をどのような論理にもとづいて組み合わせるのかに関する理論を有しているものは非常に少ない。端的に言えば、「統合的」であることを謳いながら、実際には何をもってそれが統合的であるといえるのかについて説明責任を負えないことが多いのである。

そうした意味では、本書は、真の意味でインテグラルな支援とはいかなるものであるのかを示した稀有の書籍ということができるだろう。ウィルバーの理論に立脚して、こころにの治癒を実現するためには、どのような領域や次元の存在を意識する必要があるのか、また、それぞれにおいて具体的にどのような方法が効果を発揮するのか、そして、それらの方法をどのように相補的に組み合わせることが推奨されるのかについて明確に論述しているのである。

クライアントを統合的な視座にもとづいて支援するために必要な見取図を呈示することで、支援者がみずからの支援活動において何を意識する必要があるのか、また、その効果を高めるために何を習得し、どのような協力体制を支援者間で構築していく必要があるのかに関する示唆をあたえてくれるのである。

近年、世界的にロバート・キーガン(Robert Kegan)やカート・フィッシャー(Kurt Fischer)をはじめとする発達心理学者の業績が一般に紹介されるようになる中で、成人期の成長・発達の可能性に光をあてる、いわゆる「成人発達理論」がひろく注目を集めるようになっている。

ただし、成人発達理論の文脈においては、これまで主に個人の能力の開発に焦点があてられてきたために、人間の成長・発達のプロセスの中で重要な関心事項となる「影」(the shadow)の領域に関してはあまり言及されていない。即ち、成長・発達のプロセスで探求・治癒・統合されるべき無意識的な領域の課題や問題が置き去りにされる傾向があるのである。

こうした状況は非常に危険なものであるといえる。即ち、個人の成人・発達について語るときに、人格の重要な要素である無意識的な領域が半ば完全に無視され、表層的に発揮される能力だけが注目されてしまうのである(人格の中に未統合の深刻な闇や病を抱えたまま高度の能力を開発・発揮することがいかに危険であるかはいうまでもない)。

本書は、このような状況を打開するための重要な視野をあたえてくれる非常に重要な書籍である。

著者のマーク・フォーマン(Mark Forman)は、長年の臨床経験にもとづいて、個人が成長・発達を遂げていく過程で、それぞれの段階で一般的にどのような課題や問題と直面することになるのか、そして、それらをどのように克服していくのかについて詳細に論述している。人間の成長・発達は、あらたな構造と能力を創発させるプロセスであると共にそれがまたあらたな葛藤や苦悩や病理をもたらすプロセスでもある。著者は、このような成長・発達のプロセスに内在するダイナミクスに光をあてながら、読者がひとりの人間として—-また、支援者として—-それに的確に寄り添い、また、そこに息づく可能性を探求するための要諦を示してくれる。

こうした知見は、臨床心理士として活動する心理臨床家だけでなく、コーチやコンサルタントとして実務文脈で対人支援活動にとりくむ対人支援者にとっても非常に価値ある洞察をもたらしてくれることだろう。熟読をお奨めしたい。

心の複雑さに向き合うとは、どういうことか – JMAM 日本能率協会マネジメントセンター 「人・組織・経営の変化」を支援するJMAMの書籍

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